大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

旭川家庭裁判所 昭和39年(少)1211号 決定

少年 H・M(昭二二・三・一一生)

主文

少年を千葉保護観察所の保護観察に付する

本件につき証人○野○隆に支給した旅費及び日当計七六〇円は少年の扶養義務者H・Y(住所少年の本籍と同じ)からこれを徴収する。

理由

(罪となるべき事実)

少年は○○高生徒だつた者であるが、

第一、汽車通学の友人である××農高生徒Nから△△高生徒と××農高生徒との間で両校の野球試合のもつれに起因して集団決闘があると聞き××農高側への加勢を依頼されこれに参加することを決意し昭和三九年四月○○日午後七時頃集団決闘の目的で自らは登山用ナイフを携え同様棍棒等の兇器を携えたN等九名とともに北海道雨竜△△町字○○一五二番地△△神社境内に集合し、

第二、上記日時場所において△△高側と××農高側との間の連絡員であつたK、Dの両名が少年等に対し△△高側からはリーダー同志の個人的対決で問題を解決する旨申入れていたのに多数参加したと非難したことに激昂し、

(1)  Kに対し手拳をもつて左顔面を一回殴打する暴行を加え、

(2)  Dに対し手拳をもつて左顔面を三回殴打し右股部を一回足蹴する暴行を加え、

第三、上記日時場所においてN等三名と共謀のうえ兇器所持の多衆で△△高側のリーダー格である同校生徒Iを取囲み「伊達や酔狂で来たんと違う、汽車賃がかかつているんだぞ。」等と怒号し暗に劣勢のまま集団決闘に応ずるのでなければ旅費を支弁すべきことを要求し同人を畏怖させその頃同所で同人から現金一、〇〇〇円の交付を受けてこれを喝取し、

第四、その後あらためてI等から同年同月○△日同郡○×町字×△所在の△×川畔で△△高生徒と××農高生徒及びこれに加勢する○○高生徒等との間でいわゆる総ゴロと称する集団決闘を行う旨の通告を受けるや上記Nと共謀して自校側生徒H外一四名に対し上記総ゴロへの参加及び兇器の事前準備を依頼し同年同月○△日夕刻自らも登山ナイフ一丁を用意しその外にも自転車のチエーン布捲棒等の兇器多数の準備あることを知りながら上記H等を上記決闘場所に向つて集合させた

ものである。

(適用すべき法令)

第一の事実 刑法第二〇八条の二第一項、第二の(1)(2)の事実 刑法第二〇八条、第三の事実 刑法第二四九条第一項第六〇条、第四の事実 刑法第二〇八条の二第二項第六〇条、

(主たる問題点)

少年は本件第一、三、四の非行の主謀者の一人であるが罪責感が全くなく虚言の多い外見温和だが多勢で弱い者いじめをするといつた二重人格的な性格の持主である、父母は盲愛過信型で本件非行の実相すら見ようとしない、少年は本件後実姉宅に転居し都内の高校に転校したが、ために従来より一層少年を規制するものがなくなつた、従つて少年については今後相当期間継続的な専門保護を必要とする。

(結論)

少年法第二四条第一項第一号、少年審判規則第三七条第一項、少年法第三一条第一項

(裁判官 露木靖郎)

本件主文第二項の執行を命ずる。

昭和三九年一一月五日

(裁判官 露木靖郎)

参考 兇器準備集合事件経過一覧表〈省略〉

〔編注〕

集団非行生の(六九名)処分結果は次のとおりである。

審判不開始決定 三四名 不処分決定 一七名 保護観察処分決定 一八名

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例